ケトジェニックダイエットとmicrobiome

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ケトジェニックダイエットとは、高脂肪、低炭水化物の食事だ。

昔はてんかんなどの治療に使われていて、現在ではアルツハイマー病、パーキンソン病筋萎縮性側索硬化症、頭痛、てんかん、神経外傷などに効果がある可能性が報告されている。

海外ではケトジェニックダイエットで自己免疫疾患を治療(あくまで抑える)している人達が多くいる。

仕組みは体にブドウ糖が不足している時に、肝臓が脂肪からケトン体を生成して体全体と脳のエネルギーにする。ケトジェニック以外にも断食をした時や激しい運動をした時などにもケトーシスになることがある。

ケトン体は大きく分けて、アセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸、アセトンがある。そして、β-ヒドロキシ酢酸には抗炎症作用があることが判明した。免疫系に炎症を起こさせる様々シグナルを阻害して抗炎症作用を発揮する。薬と違って人体由来の抗炎症作用なので比較的に安全性は高いのではないだろうか。

ケトジェニックダイエットに対する腸内細菌の変化
ケトン体は放線菌、バクテロイデス門、フィルミクテス門、に直接的な影響を与えて腸内細菌叢を変化させることにより、腸の炎症性T細胞が減少し炎症のレベルを低下させる。

この変化によって慢性炎症も減り様々な自己免疫疾患に有効なのだと思う。

他にはアッカーマンシア・ムシニフィラ、パラバクテロイデス属、を増加させることにより、てんかんの発作を抑える。

ケトジェニックダイエットや糖質制限には批判的な記事も多いですが、違った側面から見ることも大事だと思う。

私自身の体験
私もケトジェニックダイエットを行っている時は、症状が軽くなる。
下痢、50~60%程度改善
お腹の張り、ガス、70~80%程度改善
腹部の不快感、40%程度改善
倦怠感、30%~40%程度改善
ブレインフォグ、不安感、無気力、イライラ、30%~50%程度改善
不眠、0~10%(ほとんど改善なし)

IBS(過敏性腸症候群)になる前には少し眠りが浅いくらいで、このような症状を感じたことは殆どなかった。

食事を変えると症状に変化が起きると分かったことで、腸内の微生物の仕業だと確信している。

症状が軽くなるのでケトジェニックダイエットを続けることができれいいのだが、元々痩せ型で糖質の摂取をやめた途端に体重が見境なく減る。
なので長期間はでない。せいぜい2週間程度。

それに、食事を元に戻すと症状も戻ってくるので根本的な解決にならない。

色々と問題もあるが、少なくともケトジェニックダイエットを行うことによって炎症が減るのは確だ。
近年、病気と炎症の関りが分かり始めてきた中で治療する方法の一つとして取り入れるのもありだと思う。

参考

・nature medicine
The ketone metabolite β-hydroxybutyrate blocks NLRP3 inflammasome–mediated inflammatory disease | Nature Medicine

・BMC Part of Springer Nature
doi.org

・Cell
doi.org

・Genetic Engineering&Biotechnology News
www.genengnews.com

FMT(糞便移植)後のウィルスのコロニー形成

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バクテリオファージは細菌を一定数にするという作用がある。
ウィルスと細菌が遭遇するか否かで一定に保っているようだ。
恐らく、IBS、SIBOなどもバクテリオファージの有無が症状に影響を及ぼしていると考えている。
バクテリオファージは腸内細菌叢のバランスを維持するための重要な要素なのだろう。

ドナーのバクテリオファージはFMT(糞便移植)を成功させる重要な要素である。

3人のドナーから14人の患者へのFMT後のウイルス転移を研究した。受信者のウイルスは、最大12か月間、ドナーのウイルスに似ていました。個々のバクテリオファージのコロニー形成を追跡すると、個々のバクテリオファージの生着が特定のドナーとレシピエントの組み合わせに依存していることが明らかになりました。具体的には、単一のドナーからの複数の受信者は、高度に個別化されたウイルスコロニー形成パターンを示しました。

出展:BMC Part of Springer Nature
Long-term colonisation with donor bacteriophages following successful faecal microbial transplantation | Microbiome | Full Text

誰一人として同じ変化は起こさない。

今現在のFMT(糞便移植)は実際に移植を行ってみないと成功するか、失敗するか、変化なしか、などの結果は分からない。
将来、レシピエントに対する大きい効果を出せるドナーを高い確率で特定できるようになればと思う。

FMT(糞便移植)ドナーの質

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FMT(糞便移植)において移植の結果をもっとも左右するのがドナーの質だ。一番重要な要素だと言ってもいい。
ドナーになる人の過去から現在までの健康状態が重要である。

FMT(糞便移植)の成功率を上げるには、複数の高品質ドナーを確保することが重要だ。高品質ドナーの人数は発言している人によって差があるが、全人口の0.5%以下だと言われている。人数は凄く少ない。
当然だが確保するのは難しいと言える。
現在、高品質ドナーの人数はさらなる低下が続けている。

そして、低品質のドナーを使用すると、有害な影響を及ぼす場合がある。(IBS発症、SIBO発症、食物不耐性、症状の悪化、体臭の問題、虫歯、脱毛)などを引き起こす。つまり病気にすることも可能なのだ。ドナーが持っている健康問題を受け継ぐことは多い。

逆に高品質のドナーだと低品質ドナーでは起こらない、驚く結果が出る。(IBS、SIBO、IBD双極性障害パーキンソン病多発性硬化症自閉症、ライム病、リウマチ、うつ病、不安障害)などの症状の改善または寛解臨床試験でFMTドナーの中から一人で複数の患者を改善または寛解させるドナーが存在することがある。こういった場合は高品質ドナーだと言えるだろう。

菌液の生成方法について

治療に失敗する主な原因は主にドナーの質、菌液生成の方法である。

菌液の生成方法で言うと酸素に曝露する時間が長ければ長いほど細菌は死滅していく。なぜなら、便の中には嫌気性の細菌が多いからだ。できるだけ酸素に曝露させない方法で菌液を生成しなければならない。ミキサーを使って便を攪拌させる方法もあるが、その方法だと酸素に曝露する時間が増加するであまり良い方法だとは言えない。それとは別に腸溶カプセルなどに便を入れて服用する方法もある。

FMT(糞便移植)がどのような病気に使用されているかについて

自閉症は移植された年齢や回数でバラバラの結果。比較的に低年齢で移植した場合に改善してるように見える。恐らく遅発型の自閉症に効きやすいのだと思う。

潰瘍性大腸炎の患者が改善または寛解する例は多い。しかし、移植した数カ月後に再発したり効果が薄れてくる場合も多い、なので再移植を希望する人もいる。

クローン病に関しては改善例が0ではないが、同じIBD潰瘍性大腸炎と比べると圧倒的に数が少ない。クローン病の方が治療するのは難しいのだと思う。

そして、今現在のFMT(糞便移植)は実際に移植を行ってみないと成功するか、失敗するか、変化なしか、などの結果は分からない。ある程度の賭けの要素がある。

生まれて最初のプレゼント

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自然分娩で生むことには様々なメリットがある。

一つ目は腸内の微生物を新生児に受け継がせるということ。

受け継がせた微生物が新生児の腸内細菌叢をバランスを調整してくれる。
病原体から守ってくれたり、腸内に定着するメンバーを選別してくれたりなど。

二つ目は産道を通るときに適度な圧迫で新生児に生まれるという合図を送る
当然、母体への合図にもなる。その合図をきっかけに生理的な機能が動き始める。

対照的に、帝王切開では母親の腸内の微生物は受け継げないことが多い。
病原体も新生児の腸内に侵入、繁殖しやすくなる。定着させるべき適切なメンバーの選定も行ってくれない。
帝王切開で生まれた子供は腸内細菌叢の多様性も低く、本来は腸内に定着すべきではない、皮膚の微生物叢が腸内に定着していることも多い。連鎖球菌など

自然分娩で生まれた子供に比べ帝王切開で生まれた子供は、何倍も健康リスクが高く、自己免疫疾患、アトピー、喘息、アレルギー、肥満、自閉症発達障害IBSなどの様々な病気にかかりやすくなる。

どうしても帝王切開にするしかない時に選択するべき出産方法だと思う。
しかし、帝王切開で生まれたとしても産道の分泌液を後から塗布するという方法もある。

つまり、どういう分娩方法を選択するのかによって、その後に子供の健康を大きく左右する腸内の微生物を受け継がせる事ができる。自然分娩で出産するということは、母親が赤ちゃんに与えれる生まれて最初のプレゼントなのだ。

バクテリオファージを使用して神経変性疾患を治療する

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バクテリオファージとは細菌に感染するウィルスである。

バクテリオファージを簡単に説明すると、溶菌性と溶原性がある。
溶菌性は細菌に自分の遺伝子を注入して自己複製を行い、最後に細菌を溶して殺す。溶原性は細菌の遺伝子に自己の遺伝子を注入し組み込む。その組み込まれた細菌の遺伝子は受け継がれる。

溶原性ファージに関しては、抗生物質に耐性を持つ遺伝子や毒素を産生する遺伝子を持つものも存在する。その溶原性ファージが細菌に感染することによって細菌が抗生物質に耐性を持ったり、毒素を産生する能力を得ることがある。
私自身は、逆に人間にとって有益な能力を得ることもあるのではないかと考えている。

バクテリオファージの利点は特定の細菌にのみ感染して殺すこと。欠点は特異的すぎることだ。

だが、研究でもう一つの利点が判明した。それは神経変性疾患の原因の一つとなっている異常なタンパク質を溶解する能力を持っているということだ。

ファージ(バクテリオファージ)が神経変性疾患の発症に重要な役割を果たしている異常なタンパク質の凝縮体を溶解することにより、認知機能の改善などが報告されている。

治療方法はバクテリオファージを静脈注射で投与する。
ウィルスを脳血液関門に届けれるかが成功の鍵になっていて、マウスや人以外の霊長類では安全であると証明されている。
しかし、人への臨床試験で効果が出るかは、まだ不明である。

将来、アルツハイマー病、パーキンソン病筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病プリオン病などの恐ろしい病気を微生物が治療する時代も近い。
そして、今後は肉眼では見えない所で起きている様々な病気が明らかになってくるだろう。

不治の病を治療できる未来がくることを願っている。

最後に、抗生物質は敵、味方関係なく殺すことを忘れてはならない。

YouTube
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PBS
www.pbs.org

FMT(糞便移植)のドナーを探しています

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私は糞便移植のドナーを探しています。

各種検査(血液検査、便検査)、質問表あります

費用はこちらが全額負担します                    
提供してくれる方、興味がある方は、ご連絡ください。



・ドナーの条件

30歳以下
運動習慣がある
肉体的、精神的に良好
正常な排便で一貫性がある
過去6カ月間に抗生物質を使用してない(理想的には過去一度も使用してない)
持病なし、etc...

その他に詳しい項目でドナーとして適切かどうかを判断します

抗生物質が及ぼす影響

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抗生物質を使用するとマイクロバイオームに半永久的な損傷が起きる。その影響は半年後にも回復していない。できるだけ抗生物質を使用しないことが重要だ。

腸内細菌は一度失うと自然には二度と元に戻らない。絶滅するからだ。

唯一元に戻す方法はFMT(糞便移植)である。しかし、自分の遺伝子と関連付いて定着、生存していた細菌はFMT(糞便移植)でも戻らない。抗生物質を使用する前に自分の便を保存していたのなら別だが...

つまり、人々の腸内細菌叢は減少の一途を辿ることになる。

IBSIBD精神疾患代謝疾患、自閉症発達障害アトピー、自己免疫疾患などは間違いなく増加していくだろう。

本当に抗生物質を使用すべきなのかをよく考える必要がある。

早急にマイクロバイオームを保存、供給するシステムなどを作り人々の病気を防ぐためにマイクロバイオームの修復を行う必要がある。



参考文献

doi.org

www.frontiersin.org